ポストコロナのPEST分析+α :コロナで変わる世界と伸びるビジネスを見極める

本記事の目的

本記事では、ポストコロナをにらみ、コロナショックによって変わる「社会構造の変化」「人の意識や行動の変化」「技術の変化」を読み取ります。加えて、このような大きな変化時に生まれる「新規ビジネス・新規商品を創造」するために、コロナショック後の事業のネタ・シーズ・ニーズを考えます。

今後、コロナショック以前からあった既存事業がこのまま生き残る保証はありません。既存事業も社会から変化を求められ、新規ビジネスの発生も求められます。

時価総額10億ドル以上のユニコーン企業の43%は、リーマンショック時の2007~2009年の間に創業・変革した企業であると言われています。また、先日執筆しましたBlog記事「コロナショックを機会に代わる、人の意識・社会・経営の変化を読み解く」でも語りましたように、この時期に立ち上がったビジネスはその後の時流に乗り、世界をリードする存在になっています。

このようなことを踏まえ、本記事ではコロナショック後に変わる変化と、成長が期待される事業を考えます。

解説

■解説:【政治・経済要因】


最初に分析した手法を紹介致します。

まず、コロナショックで変わる変化を読み取るために、PEST分析を行いました。

<PEST分析とは>
外部環境の変化を敏感に察知して時流に乗り遅れないために、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)といった4つの観点から、自社に影響を与える外部環境で起きる要因(変化)を検討抽出する手法です。こうした自社を取り巻く外部環境要因のことを「マクロ環境」といいますが、PEST分析では中長期的に業界を囲むマクロ環境を把握し、最終的にどの項目がどのくらい自社に影響を与えるか見極め、今後の事業戦略を決定していきます。

なお、今回、政治要因(Politics)と経済要因(Economy)は1つに纏めて記載しています。

このPEST分析による【政治・経済要因】から、下記の変化が考えられます。なお、図には記載していない補足として青字で説明致します。

      1. テレワーク・非テレワーク格差/二極化

        正規雇用・非正規雇用の格差と同様に、今後、テレワークできるものとできないものとの二極化が進み、格差が生まれると考えます。テレワークにより、経費削減等で1人当たり年間15万円ほど削減できるといわれています。そして、週の半分を自宅勤務にすると、オフィス面積の削減等も含め1人当たり30~50万円ほど削減できるといわれます(米国Global Workplace Analytics調べ)。またテレワークの推進率が高いのは大卒以上・大企業社員が多く、もともと賃金が高い属性を有する上に、テレワーク化で収益が高まる企業に勤め、かつ時間的自由が生まれることで、経済的にも生活的にも豊かになり、非テレワークの人と格差が生まれると考えます。

      2. 電子決済の推進
      3. 聖域の排除
      4. エネルギーの分散化(ローカルでの創エネ・畜エネ)

        以前のBlog記事「2030年に向けたメガトレンド編」内にて解説していますように、エネルギーの発電や送電等が、大規模・集中型の施設インフラから、小規模な設備インフラで各地へ分散していくと考えます。それは、各家庭・企業が発電設備(太陽光発電等)を持つようになり、また蓄電池の設置が進むことで効率的にエネルギーを使えるようになるため、大規模な施設インフラから常にエネルギーを得る必要がなくなるためです。

      5. フードロス増大と食糧危機
      6. 資源枯渇と海中/宇宙資源開発
      7. ゴミ増とリサイクル(資源)
      8. 空気環境改善・清浄

        石炭火力は中国や新興国での消費が今後も増えることから、大気汚染の対策、5に対する改善需要が伸びていくと考えます。

      9. 不動産からモビリティへ
        (テレワーク化によるオフィス面積縮小、オフィスの郊外化)
      10. 不況時や環境変化時に強い収益補完性のあるプロダクトMIX・マルチポートフォリオ化
      11. 事業評価を尺度とする契約や融資
      12. 米中対立激化
      13. 高齢層の増大と、その後の高齢者死亡による構造変化

なお、考える際のワンポイントとして、一例をあげますと、“ルール・規制の枠から出る”ことを意識してください。

■解説:【社会要因】


コロナショックによって起こされた、人のライフスタイルの変化や生活者意識の変化、行動変容等を、【社会要因】として下記が考えられます。なお、図には記載していない補足として青字で説明致します。

      1. 距離ゼロ化(中間存在の排除)

        テレワーク化・通販需要増による物理的距離のゼロ化や、生産者と顧客の直接的取引の増加による中間存在の排除、補助金等の支払い早急化により加速された中間手続きの排除等が考えられます。

      2. ニューノーマル(非3密、人と直コミュニケーションできないストレス発生)

        自粛解除後の政府提案であるコロナ感染対策の新生活様式(ニューノーマル)推進により、3密の排除や、人と一定距離以上離れなくてはならないソーシャルディスタンス、会話時に顔をお互いにまっすぐ向き合わせないなどによって、自粛解除後の通常生活であってもコロナショック以前と違った心理的ストレスが今後増加していくと考えます。

      3. 創発・協働・全体最適・俯瞰的判断できる人材へ
      4. スペシャリストから、ジェネラリストや多能工型へ

        AI開発の急速化により、スペシャリスト性能が高いAIに専門性的仕事を任せ、一方、人に対しては全体判断ができる人材・能力を求めるようになると考えます。

      5. 自然回帰・社会性の追求
      6. 意味ある価値を感じるものへの投資・消費の増大
      7. 体験型価値へ
      8. 目標を決めて進める事業活動スタイルへ進化し、目標をどんどんスケールさせる(計画ありきでその差分を議論するスタイルの衰退)
      9. 情報過多・ありふれているものへの疲れからの解消
      10. 汎用からパーソナライズ化
      11. 高齢者の転倒回避
      12. 再生/テロメア医療による健常寿命の増大
      13. ストレス耐性強化、心のケア
      14. 帰宅後、すぐ衣類洗濯・風呂へ
        (帰宅後、一瞬で除菌)

なお、考える際のワンポイントとして、少し変わった視点の一例をあげますと、“如何に自分の時間を増やすこと、楽しむ時間を創ることができる変化”“自分にとってマイナスになる事象や体験をきっかけに、それを次も経験しないために発生する行動変化・意識変化”を意識して検討することもよいかと思います。

■解説:【技術要因】


コロナショックによって起こされた、商品開発技術や生産技術、マーケティング技術の変化等を、【技術要因】として下記が考えられます。

      1. 宇宙テクノロジー
      2. ナノ3Dプリンティング
      3. 動画ログの収集と解析
      4. 動画内容からのメタ情報取出し
      5. 培養・人口組織・外骨格
      6. 自己修復システム
      7. オン/オフラインMIX
      8. 気付かない間にログからAI提案
      9. センシング、AI、セキュリティ
      10. ロボット(例:介護、子育て、家事代行、アーム、パワードスーツ、危険/感染リスク作業)
      11. 義肢(健常者を超える能力発揮)

なお、考える際のワンポイントとして、少し変わった視点の一例をあげますと、“オーバーテクノロジーの個人化(過去の超巨大コンピュータがいまのノートパソコンやスマホのように)”“5~10年後に一般化する技術”を意識して検討することもよいかと思います。

■解説:【未来から見たお困りごと】


未来に住む自分を想像した時、未来社会で当たり前になっている生活・行動から鑑みて、ないと困るものや現代にまだ生まれてないもの等を、こちらでは【未来から見たお困りごと】として考えます。このお困りごとを考えるとは、未来を基点に現代に戻って考える逆算思考であり、現代の視点だけでは浮かばない内容を考えることができます。また、人が気付いていない要望やお困りごと、またはある商品を使ってしまうと、それがなかった生活に戻れなくなるようなものを考えつくことができます。よって、これらを実現すると、大きな成長を遂げることができます。その項目を下記に記します。なお、図には記載していない補足として青字で説明致します。

      1. アーティスト/芸術家の縛り自由化、活動力拡大 (例:放送局/芸能事務所→Youtube/個人活動による自由化)

        アーティストや芸術家は、今まで活動するために放送局や活動支援する芸能事務所や劇団等が必要でした。しかしながら、コロナショックで利用が急拡大しているようなYoutubeに生きるYoutuberのように、放送局や事務所に縛られずに、活動においても経済的にも自由に行動できるようになると考えています。

      2. 農業による個人自給化(土壌開発より作物を世話したい人の拡大)

        特に年配者による自給化が進んでいます。特に、通常の農夫とは違い、土壌開発には関心が薄く、作物の世話を中心に農業をされる方が増えると考えています。

      3. 邪魔くささからの解放 (服選び、洗濯、服たたみ、食洗器に入れる手間→改善提案例:ランドロイド)

        現在の10~20歳代の方には、2step以上の操作が必要なものを邪魔くさく感じる方が多いです。そのため、操作過程の割愛・短縮化や、洗濯であれば洗濯そのものが楽しくなるような発想が必要となります。特に家電はその傾向が強く、例えば乾燥機は熱く遅く、邪魔くささを感じやすいです。

      4. 手書き入力からの解放
      5. 子育てから宅外アクティブ化

        もともとアクティブに宅外活動をされていた方が、子育てをきっかけに宅内にこもられる方が増えます。宅外やVR等による仮想宅外での活動ができるような環境が提供されていくように考えます。

      6. スマホ取り出しの邪魔くささ

        スマホをポケットから取り出して見ることも邪魔くささを感じている世代が出現しています。グーグルグラスはコンシューマー用としては失敗しましたが、今後視覚や音声による情報取得、ニューロ操作が増えていくと考えます。

      7. もの・人・コトのシェアリング
      8. モノの良い悪いの差の消失(心地好いもの・体感覚重視)

        30歳代以下の方は、高級ブランド品と一般汎用品との違いに価値を感じないことが多いです。もちろんTPOに合わせて、必要時は高級品等を用いることはあるものの、通常生活では、心地好い体験や体感覚があるものを基準に選択されることが増えると考えます。この傾向が今のサブスクリプションにも繋がり、また選ぶ邪魔くささから、衣服選択もしてくれる衣類のサブスクリプションサービスの発生にも繋がっています。

なお、考える際のワンポイントとして一例をあげますと、“思い込みや既成概念の排除”“2Step以上の動作は邪魔くさく感じてシンプル化する”“女性の生活行動を楽にする”“分断されていたものを集合・融合させる(例:コインランドリ+カフェの融合)”“複雑なものを細分化・単純化させる”ことを意識して検討することもよいかと思います。

■解説:【変化がずっと止まっているもの/早すぎた・遅すぎた過去のもの】


過去から技術や行動様式が変化していない(進化が止まっている)ビジネスや商品、または過去に存在していたが、当時は早すぎた、または遅すぎたために受け入れられなかったビジネスや商品を考えます。例えば、私どものコンサルティングビジネスや士業ビジネスは登場したころから、様式が変わっておらず、本質的なビジネスの進化はありません。また、早すぎたビジネスといえば、自分の3Dアバターたちが住む仮想世界で交流する「Second Life」が2000年代にありましたが当時の社会には早く、一方で現代では同様世界のNintendo Switch「あつまれ どうぶつの森」がヒットしています。

このような【変化がずっと止まっているもの/早すぎた・遅すぎた過去のもの】として、下記に記します。なお、図には記載していない補足として青字で説明致します。

      1. 士業 (行政書士・税理士・弁護士・司法書士等)
      2. 菌/発酵(土壌細菌・キノコ)
      3. 政治・官庁・行政システム
      4. 衣服(ボディスーツの変化)
      5. セキュリティ(センサーONOFFの世界)
      6. スマホの使い方(20年間同じ)

        スマホは新しいものという感覚がありますが、実は登場してから約20年間、タッチ液晶でアプリを操作する仕様は変わっていません。

      7. マイナンバー活用(日本)
      8. 白物家電/三種の神器

        洗濯機や掃除機・調理家電等は、最近IoT機能も加わり変わりつつあるものの、本質的な使い方には変化がありません。iRobot社の自動掃除ロボット”ルンバ”を例に軍事技術との融合のような、新たな変化があると、大きく需要創造が可能となります。

      9. コンドーム

        コンドームは紀元前3000年頃から仕様は変わらず、動物の腸からラテックスゴム等への素材の変化があっただけです。本能欲求を刺激する商品だけに、変化・進化すると爆発的需要を生み出すと考えます。

      10. エンタメ・美術・芸術業界

        エンタメ業界も変化が少ない業界です。例えば、サーカスに演劇の考え方を融合させてシルクドソレイユができ、世界的ブームを起こしました。 

なお、考える際のワンポイントとして一例をあげますと、“既得権益を壊す”ということを意識することもよいかと思います。なお、既得権益を壊すことは難しいと考えられがちです。しかしながら、人が気付いていない/知らされていない権益を顕在化させたり、見える化することで広く矛盾を周知することが既得権益をなくす方法の1つとしてよいです。

以上が検討分析して抽出した結果となります。

最後に

◇ ポストコロナ後のPEST変化から気付く顧客ニーズを想起する。
◇ ニーズに近い「未来から見たお困りごと」「変化がずっと止まっているもの/早すぎた・遅すぎた過去のもの」からビジネス変革ネタを抽出する。

 

最後に、【未来から見たお困りごと】と【変化がずっと止まっているもの/早すぎた・遅すぎた過去のもの】は、顧客のニーズ・インサイトや、顧客がまだ気付いていない要望を見出すことがしやすく、新規事業の創造や既存事業の新たな方向性を導くことに大きく寄与します。そのため、単なるPEST分析だけで終えることなく、【未来から見たお困りごと】と【変化がずっと止まっているもの/早すぎた・遅すぎた過去のもの】の2つの検討をして頂くことをお勧め致します。なお、この2つから得られる事業ネタは、【技術要因】で変化した技術が支えることが多く、またその事業ネタの発生を証明するものとして【政治・経済要因】【社会要因】の変化がそれに当たる構図が多いです。

今回紹介しています分析後の結果は、まだまだ一部です。様々な角度から検討を行うと、また違った結果を得ることができます。今回、弊社のメンバー5名で検討した内容です。できるだけ、多能・多技能・多思想な方々と議論され、深めて頂くことをお勧めいたします

 

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